44.風がくる道 2018/09/24 (月)

1 絵画鑑賞において、表現者の表現意図と鑑賞者の感情や表現意識とが合致して、本当に動かされて感動する作品に出会うのはなかなか難しいことです。
  例えば、六本木の国立新美術館に行って、複数の展覧会を巡って1000点ほど作品を見たとしても、本当に自分の心を打つものは数点程度です。
 公募展などでは作品を撮影することができますので、心を動かされた作品は撮影して記録を残すようにしています。


2 県立美術館分館で、全国的な洋画団体であるT会の巡回展が開催されていましたので、先週末に出かけてみました。
  約120点ほどの作品が展示されていましたが、パターン化したようなモチーフや表現が多く、
 私の心を掴むような作品には出会えませんでしたが、いいなと思える絵が2点ありました。
  そのうちの1点は「風がくる道」というタイトルで、会友奨励賞を受賞されていました。
 ひと目見て技術的にしっかりしていることは分かりましたが、この絵が何を表現し伝えようとしているのかがよく分からず、ずっと絵の前で佇んで感じていました。


  画面の左には、憂いのあるような、しかし、強い意志も感じられるような目をした、若く美しい女性が描かれています。
 服装は胸元にブルーのラインが入った白の長袖とGパンで、目の表現以外は明るく爽やかな印象です。
  これだけなら何てことはないのですが、パステル調の柔らかで明るいグリーンでうっすらと覆われた女性の背景には、明確ではないのですが、
 どうやら、兜を被って槍を備え戦いの斧を持った、馬に乗った中世の騎士と、そしてその足元には10数本の薔薇の花が描かれているようでした。


  これは何だろう? どういうことなのだろう? なぜタイトルが「風がくる道」なのだろう?
一見しただけでは分かりませんし、私には作者の本当の意図は分かりません。
  人間は戦いを繰り返し続ける一方で、薔薇の花に象徴される愛や調和を求める心もあって、
 そのカオスの中で人間の歴史は作られてきたこと。自分もその歴史を背負った人間の一人としていまこうして存在し、その歴史の風を感じていること。
そして、これから、人類はそしてこの女性は、その歴史の風を感じながら、どこに向かうのだろうか。
戸惑いながらも進もうとするその強い意志が彼女の目に表現されているのだろうか・・・・、絵の前で佇みながら、色々と考えさせられました。
   この作品は鑑賞者の多様な想像を喚起する、とてもいい絵だと思いました。