38.事業承継ネットワーク 2018/09/18 (火)

1 9月14日の午後から、ホテル日航熊本で、熊本県弁護士会と熊本商工会議所の
 共催による会社経営者向けのセミナーが開催されました。
 会場はかなり広かったのですが、結構な盛会でした。


2 セミナーの前半では、事業引継ぎセンターの担当者の方から、「事業承継ネットワーク」
 についての説明がありました。
  これについては、既にブログのNo.22でも書いていますが、今回は事業の全体像と
 活動内容に関する具体的な説明があり、参考になりました。
 ⑴ この事業は、元々は中小企業庁の「事業承継5ヶ年計画」にもとづくものです。
  今後、益々経営者の高齢化と後継者不足が見込まれますので、このままでは日本の
  企業数が減少して経済的活力がなくなってしまうことから、「地域の事業を次世代に
  しっかりと引き継ぎ、事業承継を契機に後継者がベンチャー型事業承継などの
  経営革新等にチャレンジしやすい環境整備を行うこと」を目指しています。
   具体的には、①経営者の問題への気付きを促す(事業承継プレ支援体制等、
  企業からの相談を待つのではなく、こちら側から企業へ積極的にアプローチをかけ、
  企業に問題点を認識して貰ったうえで相談、支援を行うプッシュ型の事業承継を
   5年間で25~35万社を対象に実施する、支援を行う専門性のある人材の
  育成と活用)、②後継者が事業を引継ぎたくなるような環境の整備(経営上の
  課題の明確化と相談、経営革新、改善、事業計画書の作成支援など)、
  ③後継者マッチング支援の強化(小規模M&Aマーケットの形成、事業引継ぎ
  センターの強化、29年度M&A目標件数1000件、5年後目標2000件)、
  ④経営人材の活用などとされていますが、
   この中でも「プッシュ型事業承継支援事業」が中核になっているようです。
 ⑵ そのため、熊本では、県からは「事業承継ネットワーク事業」が、
  国からは「プッシュ型事業承継支援強化事業」が委任事業とされていて、
   おそらくかなりの額の支援金が支出されているものと思われます。
   そして、同ネットワークの中継機関は、熊本県、熊本市、熊本県商工会議所、
  熊本県商工会連合会、中小企業中央会、熊本県信用保証協会などで、
   これに各金融機関や士業等の専門家が協力して、企業と承継事業者間の
  コーディネートやマッチングを行う仕組みになっています。
   地元の税理士会、商工会、各金融機関には既に5000枚もの
  診断用紙を配布して、協力して貰っているとのことです。


3 このような国の計画と金銭的支援を基に、地元にこれだけ大きな事業承継の公的
 ネットワークが立ち上げられ、積極的に活動が行われると、もう事業承継について
 弁護士が活躍できる可能性は低いようにも思われます。
  ただ、これだけ大規模な組織と実働部隊を立ち上げ、多額の支援金が投入されて
 いるにもかかわらず、説明によれば、平成29年の熊本県内での事業承継の成約件数は6件、
 平成30年も9月中旬の時点で5件とあまり多くないようにも思えます。
  関係者の方々が協力体制を作って社会の活性化のために一生懸命取り組んでおられることは
 理解していますし、大変貴重なことですが、私の率直な感想としては、人的、金銭的投資の割に
 効果が少ないように思いました。
  私たち弁護士としても、豊富な知識と経験、判断力、調整力を活かして、この分野で活躍できる
 場があると思われます。私は、弁護士会や個々の弁護士はもっとそうした視点から事業承継分野への
 営業開拓に積極的に関与し、進出していくべきであると考えます。
  私も、以前中央にある大手金融業者との間で「譲渡評価額が数百億円」にもなる大きなM&A案件を
 担当した経験があります。
  その際には、買取側からの会社体制のチェック、デューデリジェンス{資本査定}、売主側からの
 東京の大手法律事務所作成の厚さ数センチにもなるM&A契約書の内容チェック、買主側担当弁護士との交渉、
 双方の実務担当者との打ち合わせと交渉、東京での契約調印…等々、長い期間に亘って様々な手続を行う必要があり、
 かなりの大仕事でしたが、大変貴重な経験になりました。
  このように弁護士のプロフェッショナルとして知識と経験を活かすことができれば、より有効かつ的確に
 事業承継を行うことができます。
  では、具体的に新しい重点分野としてどう取り組み、どう展開していくのか?
  現在個人的に色々と考えているところがありますので、少しずつ実行に移していきたいと思います。