26.生きる意味 2017/05/26 (金)

自然の中で撮影をしていると、花を撮ることが多いものです。
それは、生命が光り輝いていて、すばらしいから。


でも、花はなぜ咲くのでしょう?
自分の存在を目立たせ、昆虫等に授粉を促して、
そして子孫に世代を繋ぎ、多様性を確保するため?
テロメアもあったりして。
いえいえ、「花はただあるのみ」ですよ。
目的も評価もありません。
「何のため」は人間が考え出したフレームですよ?
いろいろな考えがあります。


花のことは人間のことでもあります。
自分は、どうして今ここに生きて、存在しているの。
そして、なぜ死ななければならないの?
この世界はどんな仕組みになっているの?


これに対し、現代の分子生物学の所見は答えます。
それは地球38億年の生命の歴史が作り出したシステムです。
当初の声明は「無性生殖」で、全く同じ遺伝子をコピーしながら無限に殖え続けました。
ところが、生命が誕生して約20億年後に、「有性生殖」のシステムをとる生物が出現しました。
有性生殖とは、卵子と精子を合体することで、新たな遺伝子の組合せを持った個体を生み出すシステムで、
生物の進化のスピードを速めて、遺伝子を多様化するのための仕組みです。


そして、細胞レベルでは、再生系の細胞は、体の中で毎日生と死が繰り返されています。
毎日3~400億個の細胞が死んで、ほぼ同数の細胞が細胞分裂によって補給されています。
1日に死ぬ細胞の量は約200gで、ステーキ1枚分にもなります。
ただ、細胞分裂の回数(分裂寿命)は動物種によって決まっていて、人間の場合は50~60回が限界ですので、
これらの細胞の遺伝子には死がプログラムされていることになります。
一方、ヒトの体の中には殆んど再生しないで何十年も生き続ける神経細胞や心筋細胞があり、
その機能を果たせる時間(分化寿命)は100年程になっていて、
これらの細胞の遺伝子にも死がプログラムされているのです。
この再生細胞の分裂寿命と非再生系細胞の分化寿命とによって、個体は死ぬことになっています。


では、どうして細胞の遺伝子には死がプログラムされているのか、
つまり、なぜ私達は死ななければならないのかというと、
ひとつの個体は生きていく中で、遺伝子にいろいろな傷が蓄積して老化していき、
生殖細胞にも傷が蓄積していくことになりますが、
この傷の入った遺伝子を持った古い個体がずっと存続していると、
遺伝子プールの中にさらに傷が蓄積(遺伝的荷重)し、
種が絶滅してしまう可能性が高まってしまいます。
それで、これを確実に回避するために、ある時期が来たら傷の溜まった古い遺伝子を個体ごとに消去する、
つまり死ぬことになっているのです。
(以上、「新潮45・6月号」、東京理科大 田沼靖一教授の「科学者による寿命論」を要約)


確かに、そういうことなんでしょうね。
私達の存在は世代を繋いで行くことで、人類という種全体の進化と発展を目指していることは間違いないんでしょう。
私達は、女王蜂のために空を飛ぶ一匹の蜂、地を歩く一匹の蟻と同じなのです。
そして、老いた個体は、全体種の進化と発展のために、死ななければならないのです。
ただ、人間の個体は遺伝子を運ぶ船で、私達は人類の進化と発展のために生きれて来て死んでいくんだと言われても、
意思と感情のある生身の人間としてはちょっと寂しくなってしまう面もあります。
私達は、そんなシステムなんだろうなと分かりながらも、そんなシステムの中で、
その限りある時間を認識し、自覚して、人生を生きています。


私の、そして、あなたの生きる意味はどこに?