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写真集 Spirits of ASO






私と写真と人生と

この写真集を手に取って下さり、ありがとうございます。
この写真集は、主に熊本県阿蘇地方を中心として、「時間と生命(いのち)の移ろい」をテーマにした写真集です。

1.写真のきっかけ「覚悟」

私が本格的に写真を始めたのは、2001年(平成13年)10月からで、そのきっかけは、1999年(平成11年)から大病を経験したことからでした。仕事も家庭も順調に推移し、事務所も建築し、さぁこれからの人生の後半の目標は何にしようかと漠然と考えていたとき、私は突然に病を得ることになりました。映画や小説ではあるまいし、まさか自分の身に具体的に死の可能性を突きつけられようとは思ってもみませんでしたが、「そうか、俺は死ぬのか」と死が目前に迫ってきて本当に切実に感じられた時は、やはり真剣に考え ました。いや考えざるをえなくなりました。「結局、俺の人生は何なんだろう」「今まで何をしてきたんだろう」「これから残された 時間をどう過ごしたらいいんだろう「結局、自分の存在、人間の存在とは何だろう「生命とは、神とは、」と。

 

それは、とりも直さず、現生人類誕生以来現在までの数10万年の間先人たちが全存在をかけ、哲学、宗教、芸術等のあらゆる人間の活動を通じて捜し求めていた永遠の究極の問いであり、私自身も学生時代から求め続けてきた問いかけであった訳ですが、病を得て、私はこれらの問いに対する自分の人生での現時点での一応の答えを出すことを切実に迫られることになったのです。

しかし、私が学生の頃から「何か」を求めて来たとはいえ、現生人類誕生以来先人たちが人生をかけて問い続けてきた究極の問いに対して、私が簡単に的確な答えが出せるはずもありません。

結局は、私が考えた結果は、①残された時間を仕事に打ち込み全うして自己実現し仕事を 通して社会に貢献し家族の生活を守り抜くこと、②神の存在を信じることに直接的に踏み切れない私は、生命の存在の意味を問い、答えはなく、迷いながらも、この限られた時間と生命を自分なりの物語を作って燃やし尽くすしかないという全く平凡な答えでしか ありませんでした。

しかしそれは、自分なりの、私の人生を統括する「覚悟」でした。そして、スローガン的には 「人の3倍の濃度で生きよう」「明日死んでもいいように、今日を精一杯生きよう」をテーマにして毎日を過ごそうと考えました。

このように、自分が死ぬことへの「覚悟」のようなものができ、これを受け容れる気持ちを 持つことはできましたが、そうは言っても、他方では、あぁ~、自分は今中2の一人息子の大学入学の姿を見ることはできないだろうな と、思わず、2回だけ、夜に枕を濡らしたこともありました。当たり前だけど、ちょっとセンチな気分にもなりました。


2.覚悟のあと

このような覚悟をしてからは、私は、平日は今まで以上に仕事に力を尽くすとともに、まず、死ぬ前に幼い頃から毎日見続けてきた地元の「俵山」と「鞍岳」に登っておこうと考え、2001年(平成13年)の春に両山に登ったのですが、その時に、山での心地よい感動と達成感があったので、これを契機に当初は休日に九州百名山を登破しようと考えました。

しかし、その山々への登破を重ねる過程で、次第に登山そのもの、頂上を目指すこと自体より も、写真の方へと関心が移って行きました。そして、プライベートでも本当に一日一日を熱中して、生きている実感を持って過ごしたい と考え、同年10月からカメラ機械を購入して本格的に写真を始め、写真に集中して行ったのです。

私は弁護士としての仕事が忙しく、撮影に十分な時間をとることは難しい状況でしたが、この決断をしてからは、休みの日は、夏は朝3時に冬は5時に起きて家を飛び出し、帰るのも夜のことが多く、本当に一心不乱に一日中撮影に飛び回りました。阿蘇を中心テーマとして、多い年は年間100日くらい撮影に出掛け、阿蘇の山々や草原の大自然の中を飛び 回りました。阿蘇の大自然は本当に感動的でした。本当に心が開かれました。そして、九重や霧島、大雪山、穂高などの国内の山々を はじめ、ニューカレドニア、桂林、バンコクバリ島、上海等々の海外にも撮影旅行に出掛けたりして、写真に集中しました。この5年間で35mmフィルムだけで約2,000本、約70,000カットを撮影しました(現在は、デジタルカメラです)。

写真も出会いも一期一会と言いますが、私の場合は本当にこの場面、この風景に出会うのは最後 だろうと思っていましたので、思いを込めて撮影を続けました。写真を始めたこの5年余り、私は一心に撮影を続けて、私のいのちと時間は本当に充実していました。


3.写真と人生と

写真の魅力は、一日中自然の中に身を浸すことにより、空や雲、風の匂い、木々や山の佇まいを感じ、対象に感激し、心が開放され、本当に「今、ここに自分が生きている」ということを肌で感じ、実感することができる点です。 勿論、作品を創る、自分なりの表現を創造していく喜びもありますが、自然の対象に向き合い、自分に向き合い、その中で、時間と生命 と、そしてスピリチュアルなものをも体感することができることが何よりも魅力です。

人間は、今、この時間、この瞬間を生きるしかなくその意味では人生とはこの瞬間の連続に過ぎないものです。過ぎ去った過去は記憶と媒体にしか存在せず、まだ来ぬ未来は推測でしかなく、今あるこの時間だけが、本当に生きてい る実感があるものとして、かろうじて何とか確かかなと言えるものなのです。今ここに生きていることの不思議、存在の不可思議を感じて、生命(いのち)を燃やす。写真は、このような時間と生命のあり様を肌で実感し、体感することができる格好の分野です。

私は、この5年余り迷いながらも夢中で写真に熱中し、自然と向き合い、自分と向き合ううちに、 時間と生命、そして存在の意味という問いかけについても、より深く感じることができるようになりました。そして、今では、病も含め て私のこれまでのすべての出来事が私の人生にとって必要だったのだろうと思えるようになりました。すべてを受け容れて、存在の不思 議に迷いながらも思い悩むことなく、この時間この時間を、この一日この一日を、ただ淡々と生きて行くことが大事だと、身を以って分 かるようになりました。

人生約30,000日。人は、ともすれば日々の日常に流されて、毎日を何となく漠然と過ごして生き てしまいます。あっという間の一生です。でも、今日は自分の人生で生まれて初めての一日、そしてもう二度と戻ることのない一日。 だから、自然もいのちも、生きることも、切なくて、いとおしい。私は、そんな過ぎ去り移ろいゆく時間と生命に万感の思いを込めて、 この一瞬一瞬を写しとめ表現していきたいと思っています。

私は、この人生で写真という趣味に出会えたことを本当によかったと思っています。 今後も、一日一日を大事にして、仕事に家庭に写真に、新しいテーマと更なる自分なりの表現を目指して 挑戦していきたいと思います。



写真集 Spirits of ASO -時のしずく-について

2007年(平成19年)8月、阿蘇の大自然の中で「生命と時間の移ろい」をテーマとした 写真集「Spirits of Aso-時のしずく-」を出版し、幸いにも熊日新聞社の「マイブック出版賞大賞」を受賞しました。
 2007年(平成19年)8月17日、熊日新聞(夕刊)に、写真集に関する記事が紹介されました。

熊日掲載記事  
  

写真集は予想外の大きな反響があり、増刷しましたが、すでに完売となりました。

写真集「Spirits of Aso-時のしずく-」を出版してから、多くの方々からお心のこもった暖かな お電話、メール、お手紙を頂きまして、大変感謝しています。ありがとうございます。
 また新たな目標に向かって挑戦し続けて行きたいと思っていますので、今後ともよろしくお願い致します。   



熊日掲載記事
熊日掲載記事
熊日掲載記事
坂本

撮影地

熊本県阿蘇地方
(但し、1枚は熊本市、3枚は大分くじゅうなど)


撮影期間

2001年(平成13年)10月 ~ 2007年(平成19年)1月


主な撮影器材

①カメラ
キャノン   EOS-1VHS (フィルムカメラ)
キャノン EOS-1V (フィルムカメラ)
キャノン EOS-1DMark II   (デジタルカメラ)
現在は キャノン EOS-1DS Mark II



②レンズ
キャノン EF 16~ 35mm F2.8 L
キャノン EF 28~ 70mm F2.8 L
キャノン EF 70~200mm F2.8 L IS
キャノン EF100~400mm F4.5~5.6 L IS
キャノン EF 28~135mm F3.5~5.6 IS
キャノン EF 75~300mm F1.4~5.6 IS など